八〇代の壁
一年後には八〇歳。目の前に大きな壁が立ちふさがり、前に進むことが不安になっておりましたとき、文京高校同窓会・同期会の案内が届きました。
この思いを共有できるお仲間がいる、そんな気持ちに押されての参加です。
六〇年ぶりに訪れた母校は、私の記憶に残るモデルスクールの面影ではなく、はるかに大きく立派な建物になり若い活力がみなぎっておりました。
9期は今回が最後の招待学年ということですが、この場に立つと時間の経過が抜け落ちてしまうのでしょうか、私には最後という実感がありません。
年月は、一年一年確実に重ねてきたはずなのに、「どなたア」と胸の名札を見れば「ああ〇〇さん、変わらないわねエ~」と、ときは瞬時にあの日に飛んで、目の前には十代半ばのあなたがいて私がいるのです。
会場の体育館では、多くの友と話す機会がありました。ここに私が過ごした一時代の歴史があり、今が支えられている、と改めて意識いたします。
会場をメトロポリタンに移し、先に逝かれた方々への黙祷を捧げて同期会が始まりました。招待学年最後の同窓会であり、同期会もこの日で終わりであることを惜しむように、盛り上がっていた会話は、やがて閉会のあいさつに促され静まっていきました。
万感の思いがこもる「お元気で」の言葉に堅い握手を交わしながら、闘病中のため欠席された方々の回復をお祈りし、9期の同期会は散会したのです。
みな様どうぞお変わりなく。幹事さんありがとうございました。
この日私は、目前の「壁」に進む勇気をいただいた気がしております。
9期E組 辻田志津子(旧姓舟橋)